後藤逸女

今日のタイトルを見て、
誰なのかを知っているのは
秋田県内の方でも数少ないのではないでしょうか。

文化11年(1814年)、川連野村(かわつらのむら 今の湯沢市稲川町)
に生まれ、江戸時代末期から明治の初めにかけて

家を守り歌に生きた女流歌人 後藤逸女(ごとういつじょ)

のお話です。


本名を後藤逸、雅号が逸女(伊津女)。

逸は、7歳で手習い師匠に弟子入りし、
13歳で蒔絵師井上武兵衛に弟子入り
15歳で一人前の蒔絵師となりました。

この頃から歌道に目覚め、
17歳で結婚し一子虎吉を生みましたが、
まもなく夫と死別。
その後は再婚することも無く、農耕のかたわら久保田(今の秋田市)に通い
秋田藩の国学者から和歌と国文の指導を受けました。


逸の評判が高くなって、
秋田藩十代目藩主佐竹義厚(よしひろ)の耳にも入ることとなり
参勤交代で湯沢を通ったとき、逸は佐竹南家に呼び出され
和歌を詠むように言われました。


殿様は意地悪なお題を逸に出しました。
秋の季語「月」を「春の月が平野に入る」
夏の季語「蛍」を「秋の蛍」
春の季語「早苗」を「冬の早苗」

という、難しいお題でした。

逸は、一瞬あまりにも唐突で難しいお題に逃げ帰りたかったそうですが
それも恥ずかしいと、次の歌でお答えしました。


「春月平野に入る」には

うらむべき  山の端もなし若竹の  つまにかくるる  武蔵野の月

*武蔵野には月を隠す無粋な山もなく、育ち始めた若竹の先端あたりに春の月がかかって風情がある。

「秋の蛍」には

石に火の  うちいづるよりはかなきは  秋の蛍の  光りなりけり

*秋まで残っている蛍の光は、火打石の火花よりもはかなくて頼りない。


「冬の早苗」には

稲くきに  まかぬ早苗ぞ青みけり  豊けきとしに  冬のひつじ田

*豊年の年は種を蒔いたわけでもないのに、ひつじ(刈り取った後に稲株から再生する稲のこと:秋の季語)が青々として美しい。


と答え、殿様をはじめみんなが大変に驚いたそうです。
逸20歳のときの話です。


その後逸は江戸藩邸の出入りも許され、
北村季文・松下青梅ら中央文人の直接指導も受けています

逸の残したものには
短冊・色紙・扇・掛け軸などが多く
6枚屏風に徒然草の一節を、
独特な流れるような美しい文字で書いたものも残っています


歌集も、現在確認できるものは
「その後の歌集」295首
「藻塩草鈔」120首
「酉とし詠藻」550首
「藻塩草」326首
「伊津女歌集」347首
「逸女歌文集」38首
の合計1676首で、
その他もあわせると2000首を越えるものと思われます。



明治4年、時の知事佐竹義理(よしまさ)は逸を訪れ、その生活に感動し
家族一同にひとり五合扶持を与えることにし、
自ら「愛日廬」(あいじつろ)の額を書き与えて励ましたそうです。

*愛日廬とは「孝子の家」(寸暇をおしんで孝行に励んでいる家)という意味です。


才能に恵まれていたとはいえ、
家庭的には不幸の境遇にありながら、
貧しい一介の農夫によって
和歌や文学についてこれほど偉大な業績がなされたことは
奇跡的であると共に素晴らしい感動を感じさせてくれます。


幕末から明治維新の激動の時期に、
貧しさと戦いながら家を守り、常に明るく希望を失わず、
寸暇を惜しんで精進を重ねた逸の生涯は、
まさに日本女性のかがみと言えるのではないでしょうか。



んだば








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この記事へのコメント

2006年04月19日 21:14
 こんばんは☆ねこみみです♪

 20歳でこれだけの歌を・・・??

 なんだか私が作った言葉が恥ずかしくなります(苦笑)・・・。
 私なんか季語なんてないし、ただ気持ちを言葉にしてるだけなので本物を目にすると気持ちがシャキっとしてきます(ニコッ☆)。
 私のも数だけなら1000~2000近くは書いてますけど・・・って比べること自体間違ってますね(テヘッ☆)。
 ねこでした。ニャン☆
なまはげ
2006年04月21日 16:27
★ねこみみちゃんへ
 逸女はものすごい女性でした。生まれが片田舎の農村でなく、都会の武家にでも生まれていたならば日本の文学史は変わっていたでしょうに。今回の調査で逸女のことをもっと調べてみたい衝動に駆られています。
ナマハギ
2006年09月20日 16:29
逸さんの事もっと知りたいですぅ~
なまはげさんもっと教えて下さいぃ~
れれれ
2016年07月12日 14:49
アタマの体操になるね
ころころ
2017年10月04日 08:49
失礼いたします。お伺いしたいのですが、こちらに書かれている後藤逸女の生い立ちなどが書かれた本というのはあるのでしょうか?もしあればその本の名前を教えていただきたいです。

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